スープの装画
北風のスープ- 文庫表紙

 久しぶりに冷蔵庫を開けると、しなびて黒ずんだ人参とじゃがいもがひとつずつ。
 とりあえず小鍋に水とともに丸ごと放り込み、粉末のコンソメも振りかけ、そこからとろ火で放置をする。スープの起源は、固い干し肉や少ない野菜を仕事の合間に煮込み続けたことからと以前読んだ覚えがある。だから、しなびていようと皮ごとだろうと、スープに溶け出すダシと思えば良いのだ。干し肉はないけれど。
 ことことという静かな息づかいを聴いていると、北風のくれたテーブルかけから出て来る料理とは、冬枯れを感じさせる素朴な食べ物かもしれないなぁと想えて小腹を鳴らした。

装画・文章 草葉